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安政元年はやや事多き年であった。二月十四日に五男専六せんろくが生れた。後に脩おさむと名告なのった人である。三月十日に長子恒善が病んで歿した。抽斎は子婦しふ糸の父田口儀三郎の窮を憫あわれんで、百両余の金を餽おくり、糸をば有馬宗智ありまそうちというものに再嫁せしめた。十二月二十六日に、抽斎は躋寿館の講師たる故を以て、年としに五人扶持を給せられることになった。今の勤務加俸の如きものである。二十九日に更に躋寿館医書彫刻手伝てつだいを仰附けられた。今度校刻すべき書は、円融えんゆう天皇の天元てんげん五年に、丹波康頼たんばやすよりが撰んだという『医心方いしんほう』である。
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