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これより先保は深く英語を窮めんと欲して、いまだその志を遂げずにいた。師範学校に入ったのも、その業を卒おえて教員となったのも、皆学資給せざるがために、やむことをえずして為なしたのである。既にして保は慶応義塾の学風を仄聞そくぶんし、頗すこぶる福沢諭吉ふくざわゆきちに傾倒した。明治九年に国学者阿波あわの人某が、福沢の著あらわす所の『学問のすゝめ』を駁はくして、書中の「日本にっぽんは※(「くさかんむり/最」、第4水準2-86-82)爾さいじたる小国である」の句を以て祖国を辱はずかしむるものとなすを見るに及んで、福沢に代って一文を草し、『民間雑誌』に投じた。『民間雑誌』は福沢の経営する所の日刊新聞で、今の『時事新報』の前身である。福沢は保の文を采録し、手書しゅしょして保に謝した。保はこれより福沢に識しられて、これに適従てきじゅうせんと欲する念がいよいよ切になったのである。
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