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右の話が天つ神の新嘗にいなめの物忌ものいみの日に、富士と筑波と二処の神を訪れて、一方は宿を拒み他方はこれを許したという物語、巨旦将来こたんしょうらい・蘇民そみん将来の二人の兄弟が、款待かんたいの厚薄によって武塔むとう天神に賞罰せられた話、世降くだっては弘法大師が来って水を求めた時、悪い姥うばはこれを否いなんで罰せられ、善き姥は遠く汲んでその労を報いられたという口碑などと同じ系統の古い形であることは、誰人たれひともこれを認め得る。かりに山の神の母に托した物語が日向ばかりの発明であったとしてもその意味は深いと思った。しかるについ近ごろになって、佐々木君の『東奥異聞』には遠く離れた陸中の上閉伊郡と、羽後の北秋田郡のマタギの村とに、同じ話が口伝くでんとなって残っていたことを報告している。羽後の方では八人組十人組という二組のマタギ、一方は忌いみを怖おそれてすげなく断ったに反して、他の一方では小屋の頭かしらがただの女性でないと見て快く泊め、小屋で産をさせて介抱をした。陸中の山村では猟人の名を万治磐司ばんじばんじといい、磐司がひとり血の穢けがれを厭いとわず親切に世話をすると、十二人の子を生んだと伝えている。いずれも山神がその好意をめでて、のちのち山の幸を保障したことは同じであった。
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