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彼の憤いきどおりは、日本武士道の清節のために抑止よくしできなかった。私憤よりも公憤のほうが大きかったのである。けれどその処分の苛烈かれつが、醜類の敵だけに止まらず、かよわい妻子眷族けんぞくにまで及んだので、世人はその酷むごたらしさに、みな面おもてを蔽おおった。人間の美醜両性、ぜひない世相の一面とはいえ、いまその惨状を筆にするも傷いたましい気がする。ざっと誌しるせば、その折、信長の手に捕われていた敵方の妻女百二十幾人と、その召使の女たち三百八十余人は、すべて、一ヵ所に集められ、鑓やり、薙刀なぎなた、鉄砲の類で殺された。――その悲しみ叫ぶ声は、天地に谺こだまして、眼に見、耳に聞いた人々は、十日も二十日もその日の記憶を忘れることができなかったということである。
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